衣料品や装飾品に利用される動物は多岐に渡ります。
動物の名前を直接表示せず、動物性衣料特有の言葉を使うのも特徴です。動物産業による、婉曲表現を使うことで、動物の犠牲を不可視化する戦略と考えられます。不可視化は動物産業にとって最も重要な戦略とされています。不可視化により、消費者が動物の犠牲について知ることを防ぎ、罪悪感を起こさせない効果があります。[1]
動物性衣料は、動物に苦痛を与えることで生産されます。
以下に、皮、毛皮、毛、絹、それぞれのメリット、利用される動物、動物の被害、動物に被害を与えない代替製品についてまとめます。
皮
製品
靴、バッグ、財布、アクセサリー、クラフト製品、アウトドア製品(登山靴)、家具、楽器、装飾品等
メリット
革は、高級品であり、美しく、使い込むほど味が出て、愛着が湧きます。革製品を持つことによって、本物嗜好である、美的センスが秀でているなど、自分はどのような人間かアピールすることができます。また、クラフト作家が作った革製品は、クラフトならではの味があり、プランド品では得られない愛着や特別感を得られます。
動物
牛 → カーフスキン、キップスキン、ハイド、ハラコ等
羊 → シープスキン、ヘアシープスキン、ラムスキン
馬 → ホーススキン
水牛、バッファロー、ヤギ、鹿、ブタ、カンガルー
ゾウ、キリン、シマウマ、ダチョウ、ワニ、トカゲ、ヘビ、サメ、エイ等
動物の被害
皮とは、動物の皮膚です。死んだ動物から皮を剥ぎ、こびり付いた血や血管、肉の欠片や脂肪をこそぎ取った皮膚を、着て、頭に被っているというのは、一歩離れてみれば狂気じみています。例えば、犬が、猫の皮を剥ぎ取って着ていたら、嫌悪感を持つ人は少なくないでしょう。長年それが当たり前だからといって、正当化できるわけではありません。
ハラコはさらに狂気的です。ハラコ(腹子)とは文字通り、お腹の中にいる胎児のこと。母のお腹を切り裂き、子供を引き摺り出し、そのまま母と子の首を掻き切り殺すことさえあります。
人間の被害
皮革産業は昔から、世界各国で被差別的な立場にある人が行う仕事でした。皮革産業は匂いが酷く、不衛生な環境になりがちです。これは現在でも続いています。先進国の人々や裕福な人々が着飾るために、後進国や貧しい環境の人々が、取り返しのつかない健康被害を押し付けられています。
動物に苦痛を与えない代替製品
皮にの代わりになるものとして人工皮革、合成皮、フェイクレザーやヴィーガンレザーと呼ばれる製品があります。人工皮革には、ポリウレタンやビニールなど化学素材で作られているものや、リンゴやキノコ、パイナップルやブドウなど、天然の素材で作られたものがあります。これらは、と呼ばれます。
しかし、2024年、皮革産業からの働きかけによって、JIS(日本産業規格)は、「レザー」という表記は動物性のものに限るとし、ヴィーガンレザーやアップルレザーなどの名称の使用を禁止しました。法的拘束力はありません。
ヴィーガンレザーで作られた製品を選ぶことで、動物に苦痛を与えない、動物搾取に加担しないことができます。スノーピークや、ナイキなど、様々なブランドがヴィーガンレザー製品の生産を行っていることは、動物たちにとって喜ばしいことです。
毛皮
製品
コート、帽子、装飾品(バッグ、イヤリング等)、家具等
メリット
毛皮(ファー)は特別です。高級品である毛皮は富の象徴であり、女らしさや男らしさを高めてくれます。毛の少ないヒトは動物の毛皮を纏うことで、動物の気高さやゴージャスさを手に入れることができます。
動物
クロテン → セーブル
オオヤマネコ → リンクス
キツネ → フォックス・ブルーフォックス・シルバーフォックス
アライグマ・タヌキ → ラクーン
ウサギ → アンゴラ・レッキス
子羊 → ラム
犬、猫、ミンク、ウィーゼル、チンチラ、リス、ビーバー、コヨーテ、オオカミ、ヌートリア、トナカイ、アザラシ等
動物の被害
毛皮は、毛が付いたままの皮膚です。皮同様、死んだ動物から毛皮を剥ぎ、こびり付いた肉や脂肪をこそぎ取ります。毛皮の場合、動物が生きたまま、頭から足にかけて、力づくで皮を穿いていくこともあります。肉や血管が剥き出しになった皮を剥がれた動物が、頭をもたげる姿は極めて残酷で衝撃的で、正視できないほどです。
また、毛皮生産工場では、動物たちは激しい異常行動を起こしています。
そのようにして作られた毛皮製品を身に付けるということは、高貴さや貴賓の象徴を纏っているのではなく、残酷の象徴を纏っていると言えるでしょう。
動物に苦痛を与えない代替製品
毛皮を模した製品は、人工毛皮・人造毛皮・フェイクファー・ヴィーガンファーなどと呼ばれます。アクリルなどでできていますが、近年、植物性のヴィーガンファーも開発されて(BioFluff)おり、ステラ・マッカートニーなどが商品化しています。
毛
製品
スーツ、セーター、コート、マフラー、ニットキャップ、アウトドア衣類(肌着、靴下)、羊毛布団、絨毯等
メリット
ウールやカシミアなどで作られたセーターや肌着などの衣類は、暖かく、滑らかで、肌にも良いものです。「やさしい」「オーガニック」「エシカル」といったポジティブなイメージを得ることもできます。
動物
羊 → 羊毛、ウール、メリノウール、エクストラファインメリノ
アンゴラウサギ → アンゴラ
アンゴラヤギ → モヘヤ
カシミアヤギ → カシミヤ
アルパカ(ベビーアルパカ)、
動物の被害
動物の毛で作られた製品は、動物から少し毛をもらっているだけであり、倫理的に生産された動物製品というイメージがあります。しかし実態は異なります。手荒くバリカンで毛を刈られ、血だらけになることもあります。また、当然、動物は嫌がって逃げますので、作業員が怒り、殴る蹴るなどの暴行を行うこともあります。
また、羊毛生産のために品種改変された羊は、生産量を上げるために皮膚がたるむように品種改変されており、皮膚の間に蛆虫が住み、羊の皮(生産者にとっては商品)を傷つけることがあります。それを防ぐために、ミュールジング(mulesing)、つまり羊を器具に縛りつけ、無麻酔で皮膚を切り取ります。耐え難い苦痛を伴います。
そして、アニマルサンクチュアリなどに救出される以外の、ほとんど全ての動物は結局殺されます。動物性の毛でできた製品は、エシカルであることはあり得ません。
動物に苦痛を与えない代替製品
毛の代わりになる化繊は昔から使われてきました。例えば、アクリル、ポリエステル、ナイロンなどです。ヴィーガンがセーターを着ているときは、大抵これらからできたセーターを着ています。
最近では、木材や、ココナッツ、麻、大豆などの農業廃棄物などから作られた植物性のヴィーガンウールや、リサイクル ペットボトルから作られた繊維も開発され、製品化されています。(Vegan Wool)
羽毛
製品
ダウンジャケット、マフラー、装飾品、アウトドア製品(ジャケット、寝袋)、ブランケット、羽毛布団、羽毛枕、:赤い羽根募金、緑の羽募金 等
メリット
ダウンジャケットは軽く暖かく、寒い冬の日常生活や、ハイキングや登山などレジャーに欠かせません。夜には、羽毛布団が体を暖かく包み、快適で安らかな睡眠をもたらしてくれます。また、「エシカル」「オーガニック」「体に優しい」といった言葉が使われることもあります。
動物
カモ科
アヒル → ダックダウン
ガチョウ → グースダウン
動物の被害
あなたが、頭から毛をむしりとられたらどうなるでしょう。おそらく、耐え難い苦痛を感じ、抜かれた後も痛みに耐えなければならないでしょう。ダウンを生産する時、鳥たちは、そのような苦痛を感じています。鳥たちは、無理やり羽を抜かれ、抜かれた後震えている鳥もいます。そしてその鳥たちのほとんどすべてが殺されます。ダウンを纏っているということは、言わば、鳥の苦痛を纏っていると言えるでしょう。
動物に苦痛を与えない代替製品
動物の毛の代わりになるものはたくさんあります。防寒のための高機能合成繊維でできた中綿素材(インサレーション)、例えば、シンサレート(Thinsulate:3M)、ファインポリゴン(ファイントラック)、エクセロフト(モンベル)、プリマロフト(ALBANY)等。
羽毛は雨で濡れると縮み、なかなか乾きませんが、合税繊維はすぐに乾き、防寒性を取り戻します。登山やハイキングはもちろん日常生活でも、羽毛よりも合成繊維の方が危機管理に有利であり、動物を搾取することなく倫理的です。合成繊維を選ぶことは合理的であり賢い選択です。
絹
製品
シャツ、肌着、ドレス、スーツ、ネクタイ、スカーフ、寝具等
メリット
シルクは光沢感があり、高級な印象を与えます。肌触りや着心地が良く、上品な印象を与えることもできます。
動物
カイコガ(カイコ、蚕) → 絹、シルク
動物の被害
カイコは家畜化された昆虫です。幼虫が繭になると、熱湯に入れて殺し、糸を巻き取ります。
動物に苦痛を与えない代替製品
シルクの代わりに使われる素材としては、木質繊維から作られるレーヨン、綿の種から作られるキュプラがあります。どちらも絹と同様の衣料が生産されています。
ヴィーガンファッション
動物に苦痛を与えない繊維・衣類を選択することは、簡単にできます。首の後ろなどにある品質表示タグを見て、動物が使われていないものを選ぶだけ。もし知らない名前の素材だったら、スマホで検索して調べることができます。
化学繊維を選ぶこともできますが、近年では植物性素材も多くなってきています。綿(木綿)や麻は、昔から利用されてきた素材です。西欧を中心にこれまで衣料品に使われてこなかった植物から作られた製品も増加しています。
動物を苦しめているという罪悪感のないファッションは気分が明るく、軽くなります。
ヴィーガン素材を取り入れるメーカーやファッションブランドも増加しています。ヴィーガンファッション、アニマルフリーファッションを楽しみましょう。
《参照》
[1] メラニー・ジョイ, 私たちはなぜ犬を愛し、豚を食べ、牛を身にまとうのか: カーニズムとは何か, 2022/5/26, 青土社.