クマに関する被害
前提として、「クマに関する被害」には、「人間が受ける被害」と「クマが受ける被害」があります。
「人間が受ける被害」のうち、特に人間が殺されたり身体的な障害を負うような事態は、なんとしても避けなければなりません。農産物被害や社会的な混乱、交通事故等の被害に関しても防ぐ必要があります。
一方、クマが殺されることに意を唱え、声を上げる行動も理解できますし必要です。特に人間に危害を加えようもない非力な子グマを殺害することは、感情的にも倫理的にも受け入れ難い人々は多いでしょう。論理的に考えても、クマを殺し続けることが根本的な解決手段になることはありません。クマに関する被害の原因は、人間側にもあるからです。根本的な解決をするには、人間側の原因も解決しなければならないからです。
しかし、現在の価値観や法律の下では、クマを殺害することが根本的な解決策として有効とされ、実行されます。
クマが受ける被害
「クマが受ける被害」で最も大きなものは、人間に殺害されることです。
その他、クマが受けている被害には以下のようなものがあります。
・自分のなわばり(居住地)で、人間に遭遇する。(彼らにとって人間は危険生物)
・森の食べ物が減少する、無くなる。
・人間が破棄した食べ物を食べたり、餌付けによって、より多くの子供を産む、個体数が増える、人間界に侵入し殺される。
・家族が分断される。
・冬眠などの生態に異常を来たす、等。
原因
人間とクマ双方の被害を引き起こしている原因には以下のようなものがあります。
・釣りや山菜取りのための、野生動物の居住地への人間の侵入。
・ハンティングなどのための、野生動物の居住地への狩猟者の侵入。
・開発(住宅、工場、農地、牧場などの建設のため、野生動物の居住地が減少)。
・道路等の建設による分断。
・植林(針葉樹を植えたことにより広葉樹が減り、クマ等野生動物が食べる木の実や果樹が減少)。
・緩衝地帯の減少、等。
さらに地球規模の人間の活動によってクマが受けた被害は以下です。
・酸性雨
・温暖化
・気候変動
・異常気象
等
このようにみると、人間とクマの軋轢の根本原因には、人間の活動があることが分かります。
解決のための試み
人間で構成された社会では、どうしても人間の被害が強調されがちであり、責任をクマに押し付ける形で解決を試みます。しかし、起こってしまった事故に対して対症療法的な対策を続けるばかりではなく、軋轢が生じる原因を見つめ、その原因に対する改善・解決策を講じることで、人間の被害のみならず、クマの被害も減少させるアイデアが必要です。
実際、すでにさまざまな取り組みがなされています。例えば、
・人間が住む領域と、動物が住む領域の緩衝帯作り。
・奥山の再生。
・アニマルパスウェイ(道路によって分断された動物が通れる、トンネルや吊り橋など)。
・防御柵などの開発。
・ナショナルトラスト。
・国際協定(ボン条約、サムサール条約など)。
・SDGs、等。
(文末のURLを参照のこと)
クマとの関係が示す、私たちの未来
人類は、これまでの価値観やライフスタイルを続けていては未来が無いところまで来てしまいました。
私たちは、国民同士の対立関係、人類同士の対立関係、人間と動物や自然との対立関係を見直し、変えていく必要があります。
日本人はかつて、自分たちの被害のみに着目し、ニホンオオカミを絶滅させました。ニホンオオカミの絶滅は、日本の自然に大きなインパクトをもたらし、その結果が現状の一因となっています。
私たちは、何かを殺す、あるいは排除することによって、何らかの問題を解決しようとしてはなりません。そのような社会のあり方は、動物ばかりではなく、私たち自身にも返ってきます。
私たち人類は、岐路に立っています。
アニマリズム党は、新しい時代に対応する価値観、社会の仕組みを提案し実行していく人々のプラットフォームとしての役割を果たします。
(目黒峰人)
《参考》
緩衝帯の整備. 岐阜県. https://www.pref.gifu.lg.jp/page/136035.html.
奥山の再生. 日本熊森協会. https://kumamori.org/activity/reforestation.html
アニマルパスウェイと野生生物の会. https://www.animalpathway.org/.
長野式電気柵. https://www.kyowatecno.jp/blog/electric_fence/2723/.
学習放獣. https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/pdfs/chpt2-app.pdf.
ナショナルトラスト. https://www.nationaltrust.org.uk/.
ボン条約. https://www.cms.int/.
サムサール条約. https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/.