《資料》宣言:2022『動物搾取に関するモントリオール宣言』

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概要

動物搾取に関するモントリオール宣言(Montreal Declaration on Animal Exproitation)は、道徳哲学と政治哲学を専門とする研究者による、哺乳類、鳥類、魚類、および多くの無脊椎動物が知覚と意識を持つことを認め、動物搾取は不当であり道徳的に擁護できないとする宣言です。

2022年10月4日(世界動物デー)、GRÉEAメンバーであるマーティン・ジベール(Martin Gibert)、ヴァレリー・ジルー(Valéry Giroux)、フランソワ・ジャケ(François Jaquet)の主導により署名されました。2023年3月13日現在、約40ヶ国559名が署名しています。宣言文には、2012年に神経学者等が発表した、「非ヒト動物」に意識が存在する証拠があるとする『非ヒト動物の意識に関するケンブリッジ宣言』による影響が見られます。

GRÉEA(Groupe de Recherche en Éthique Environnementale et Animale:環境・動物倫理研究グループ)とは、2016年、カナダのモントリオールで設立された環境倫理および動物倫理に関する大学間および学際的な研究グループです。
非人間中心主義の観点から、環境倫理と動物倫理の研究を支援・構築・協力の促進を行うため、研究の推進・組織化・財政的支援などを行っています。

署名者リストは、こちら
ピーター・シンガー(Peter Singer)、リチャード・ライダー(Richard Ryder)、キャロル・アダムス(Carol Adams)、ロリ・グルーエン(Lori Gruen)等が署名しています。
宣言に署名する道徳哲学や政治哲学の研究者を随時募集しています。→ フォーム

ただし、署名を求められていた廃止主義者であるゲイリー・フランシオンは署名していません。理由は、本ページの下部に記載します。

以下は、宣言発表時に発表されたビデオです。
ポーラ・コーザル(Paula Casal)、オスカー・オルタ(Oscar Horta)、ピーター シンガーが、宣言に署名した理由について語っています。

『動物搾取に関するモントリオール宣言』

原文:https://greea.ca/en/montreal-declaration-on-animal-exploitation/

以下は仮訳です。修正していただける方は、本ページ最下部の「フィードバック」からご連絡ください。

私たちは、道徳哲学と政治哲学分野の研究者である。 私たちの仕事はそれぞれの哲学的伝統にに根ざしており、お互いに合意に至ることはほとんどない。 しかし私たちは、動物との関係を大きく変える必要があるという点で同意する。 私たちは、動物を物や商品として扱う行為を非難する。

不必要な暴力や危害を伴う限り、私たちは、動物搾取は不当であり道徳的に擁護できないと宣言する。

動物行動学と神経生物学では、哺乳類、鳥類、魚類、および多くの無脊椎動物が知覚を持つ、つまり喜び、痛み、感情を感じることができることが十分に実証されている。 これらの動物は意識を持つ主体である。 彼らは自分の周りの世界に対して独自の見方を持っている。 つまり、彼らには利害があるということになる。私たちの行動は、彼らの幸福に影響を与え、彼らに利益をもたらすこともあれば、害を及ぼすこともある。 私達が犬や豚を傷つけるとき、私達が鶏やサケを監禁するとき、私達が仔牛の肉のために彼を殺すとき、あるいはミンクの毛皮のために彼女を殺すとき、私たちは彼らの最も基本的な利害に重大な違反を犯している。

しかし、これらの害はすべて回避することができる。 革製品を着たり、闘牛やロデオに参加したり、子供たちに動物園に監禁されたライオンを見せたりすることを控えることは明らかに可能だ。 私たちのほとんどは動物性食品を食べなくても健康でいられるし、将来的にはビーガン経済が発展するため、事態はさらに容易になるだろう。 政治的および制度的観点から見ると、動物を、単に私たちが処分できる資源として見ることをやめることが可能である。

これら個々の動物がホモ・サピエンスという種に属していないということは、道徳的には無関係である。動物の利害が人間の利害よりも重要ではないと考えるのは自然なことのように思えるかもしれないが、この種差別的な直観は、綿密な検討に耐えられるものではない。 他のすべてが平等であるとしても、(種、肌の色、性別によって区別される)生物学的グループの単なるメンバーであるだけでは、不平等な考慮や扱いを正当化することはできない。

種内で個体間に違いがあるのと同様、人間と他の動物の間にも違いがある。 確かに、一部の高度な認知能力は特定の利害を生み出し、それが特別な扱いを正当化する可能性がある。 しかし、対象者が交響曲を作曲したり、高度な数学的計算をしたり、遠い未来に自分自身を投影したりする能力が、たとえどれほど素晴らしいものであっても、彼または彼女の喜びを感じたい、苦痛を感じたくないという利害を考慮することに、影響を与えることはありません。 私たちの中でより知的な人たちの利害は、より知的でない人たちの利害と同等に、重要ではない。それを否定することは、道徳的関連性のない能力に従って個人をランク付けすることになる。 そのような能力者主義的な態度は道徳的に擁護できないだろう。

したがって、動物搾取は動物を不必要に傷つけるものであるゆえ、根本的に不当である、という結論から逃れることは困難だ。したがって、特に食肉処理場の閉鎖、漁業の禁止、植物由来の食料システムの開発を目指して、動物搾取の消滅に向けて取り組むことが不可欠である。私達は、このようなプロジェクトが短期的には達成るだろうという幻想は持っていない。 特に、根深い種差別的な習慣を捨て、多くの制度を根本的に変革する必要がある。 しかし私たちは、動物搾取の終焉こそが、非ヒト動物にとって、現実的かつ公正な唯一の共通の地平であると信じている。

ゲイリー・フランシオン氏が署名しなかった理由について

理由は以下です。

  1. この宣言はすべての動物利用を拒否するものではないため
    (私たちは動物の使用の終焉を求めることを明確に認識しなければならない。)
  2. ヴィーガニズムを道徳的義務として推進するものではないため
    (宣言は個人の義務について具体的に何も述べておらず、署名者の多くがビーガンではない。)
  3. 宣言は「必要性」について明確にしていないため
    (「不必要な暴力や危害を伴う限り、私たちは、動物搾取は不当であり道徳的に擁護できないと宣言する。」という宣言文は、「必要な」を暗示しており、明確でない。)
  4. 動物を人間の所有物として扱うことの廃止を推進するものではないため
  5. 非ヒト人格(Nonhuman Personhood)を認めていないため

この宣言は、様々な立場の人々、ヴィーガンやノンヴィーガンも署名できるように書かれており、フランシオンはその曖昧さを認めていません。
フランシオンは、宣言の最後に以下の文章が入れられれば署名するとしています。

「上記を踏まえ、我々署名者は、動物は、その有感性(sentience)のみによって、苦しまないこと、生き続けることに道徳的に重大な関心を持つ、完全な道徳的自然人(full moral persons)であることに同意する。
私たちは、動物の搾取に終止符を打つこと、すなわち、すべての動物利用を廃止し、所有物としての動物の法的地位を廃止することに同意する。
最後に、私たちは、ビーガニズムが現在では道徳的に義務付けられていると同時に、このような動物搾取をやめるために極めて重要であることに同意する。」

《参照》

Wikipedia. Montreal Declaration on Animal Exploitation.
Gary L. Francione. Why I Did Not Sign the Montreal Declaration on Animal Exploitation. Medium. 2022/10/4. https://gary-francione.medium.com/why-i-did-not-sign-the-montreal-declaration-on-animal-exploitation-743f244af878.

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